マオリ語の数量・複数表現
Nui me Iti
この記事は、Settemila Lingueのマオリ語文法ツリーの一部です。
まず押さえること
マオリ語では、ふつう名詞の語尾を変えるのではなく、te・ngā・ētahiなど、名詞の前に置く語で一つか複数かを示します。「多い・少ない」は He nui … / He iti …、「全部の〜」は ngā … katoa、「いくつかの〜」は ētahi … が基本です。「これら・それら・あれら」には ēnei・ēnā・ērā を使います。
この表現でできること
「お客さんが多い」「水が少ない」「本を全部持ってきて」。日常では、正確に数を言わなくても、量や範囲を伝えたい場面がよくあります。この項目では、A2段階で身につけたい数量表現を、すでに学んだ te / ngā と組み合わせて整理します。
日本語では「本」だけで一冊にも何冊にもなり、「本たち」とはふつう言いません。名詞(人・物・事柄の名前を表す語)の形を毎回変えなくてよい点は、マオリ語も似ています。ただし、マオリ語には**冠詞(名詞の前に置き、その指し方を示す短い語)**があり、「一つの特定のもの」と「複数の特定のもの」を te / ngā で区別します。日本語で省ける区別でも、マオリ語では前の語を選ぶ必要があります。
もう一つ大切なのは、「複数」と「多い」は別だということです。ngā pukapuka は「その本々」で、二冊でも使えます。「本がたくさんある」と量を述べるには、さらに nui などが必要です。まず「どのものを指すか」と「その数や量がどれくらいか」を分けて考えましょう。
形と語順のしくみ
1.単数・複数は、まず名詞の前を見る
単数は一つ、複数は二つ以上を指します。次の pukapuka「本」は、どの場合も同じ形です。
| マオリ語 | 日本語 | 何を示すか |
|---|---|---|
| te pukapuka | その本 | 特定の一冊 |
| ngā pukapuka | その本々 | 特定の複数の本 |
| ētahi pukapuka | いくつかの本 | 複数あるが、全部とは指定しない |
| ēnei pukapuka | これらの本 | 話し手の近くにある複数の本 |
日本語訳の「その」は、話し手と聞き手がどの本か分かっていることを表すための目安です。te を見るたびに、必ず日本語の「その」を訳に入れる必要はありません。
また、ētahi や ēnei がすでに名詞の前にあるときは、そこへ ngā を重ねません。「複数だからとにかく ngā を足す」のではなく、名詞の前の位置にどの語が来るかを選びます。
2.「多い・少ない」を述べる:He nui / He iti
数量を述べるときの基本の型は、He nui + 数量を述べたいもの、または He iti + 数量を述べたいものです。
| マオリ語 | 日本語 | 見方 |
|---|---|---|
| He nui ngā pukapuka. | 本がたくさんあります。 | 複数の本について「多い」と述べる |
| He iti ngā pukapuka. | 本は少ししかありません。 | 複数の本について「少ない」と述べる |
| He nui te wai. | 水がたくさんあります。 | 水の量が多い |
| He iti te wai. | 水は少ししかありません。 | 水の量が少ない |
wai「水」のように、まとまりのある量として扱うものには te が使えます。「多いのだから ngā」とはしません。日本語でも「水が多い」と「水が何本もある」は違う言い方ですね。マオリ語でも、水そのものの量と、容器などの個数は分けて考えます。
この型の he は、後ろの nui / iti と合わせて数量を述べる表現を作っています。「he があるから、後ろの名詞には冠詞を付けない」とは考えないでください。He nui ngā pukapuka. では、ngā は pukapuka に付いています。
3.nui・iti は「大きい・小さい」にもなる
nui と iti は、数や量だけの専用語ではありません。大きさについても使います。何の話をしているか、どこに置かれているかで読み分けます。
| マオリ語 | 日本語 | 注目点 |
|---|---|---|
| He nui ngā whare. | 家がたくさんあります。 | 家の数を述べる読みが自然な場面 |
| He whare nui tēnei. | これは大きな家です。 | nui は直前の whare の特徴を表す |
| He iti te wai. | 水が少ないです。 | 水の量 |
| He whare iti tēnei. | これは小さな家です。 | 家の大きさ |
名詞の特徴を表す語は、基本的に名詞の後ろに置きます。whare nui は「大きな家」です。日本語の「たくさんの家」を、そのまま「多い+家」という順番に置き換えると、自然なマオリ語になりません。
ただし「文頭なら量、名詞の後ろなら大きさ」と機械的に決まるわけでもありません。たとえば He nui te whare. は「その家は大きい」という読みになります。初めは、量には He nui te wai.、数には He nui ngā pukapuka.、大きさには He whare nui tēnei. と、典型的な組み合わせをまとめて覚えると安全です。
4.「全部の〜」:名詞の後ろに katoa
katoa は「全部・全員・全体」を表します。特定の複数のものを全部指す基本形は ngā + 名詞 + katoa です。
- ngā pukapuka katoa — 本を全部まとめて指して「すべての本」
- ngā tangata katoa — 「すべての人々」
ngā が複数を示し、katoa がその範囲を残らず含めることを示します。日本語の「全部の本」とは語順が違い、katoa は名詞の後ろです。
また、te + 名詞 + katoa なら、一つのものの「全体」を表せます。
- te whare katoa — 「家全体」
- te rā katoa — 「一日中」
したがって、katoa があるから必ず ngā というわけではありません。「家々を全部」なのか「一軒の家全体」なのかで、最初の語が変わります。
5.「いくつかの〜」:ētahi
ētahi は、複数の人や物を「何人か・いくつか」と指すときに使います。
- ētahi pukapuka — 「何冊かの本」
- ētahi hoa — 「何人かの友人」
ngā pukapuka katoa「すべての本」と違い、ētahi pukapuka は全体を残らず指す言い方ではありません。ただし「残りは必ず違う」「正確に二、三冊だ」とまで決める語でもありません。
名詞が会話から分かるときは、ētahi だけで「いくつか・何人か」と言えます。Ētahi atu. は「ほかにもいくつか」「ほかの人たち」などで、atu が追加や別のものを示します。何を指しているかは、直前の話から補います。
6.「これら・それら・あれら」:ēnei・ēnā・ērā
日本語の「こ・そ・あ」と似た整理ができますが、まずは話し手と聞き手の位置関係で覚えましょう。
| マオリ語の単数 → 複数 | 日本語の目安 | 基本の距離感 |
|---|---|---|
| tēnei → ēnei | この一つ → これら | 話し手の近く |
| tēnā → ēnā | その一つ → それら | 聞き手の近く |
| tērā → ērā | あの一つ → あれら | 両者から離れたところ |
tēnei pukapuka は「この本」、ēnei pukapuka は「これらの本」です。複数形のために mau を付け足すことはしません。この意味では tēnei mau / tēnā mau ではなく、ēnei / ēnā を使います。
初めは tēnei と ēnei の違いを、指で一冊・数冊を示しながら練習すると分かりやすくなります。長母音を示す横線もつづりの一部なので、ēnei・ēnā・ērā と書きましょう。
場面で見る例文
買い物、集まり、物の受け渡しを想像して読んでみましょう。名詞だけのまとまりも含めています。まとまりは文の一部として使え、会話では短い答えにもなります。
| マオリ語 | 日本語 | 場面・ポイント |
|---|---|---|
| He nui ngā tangata. | 人がたくさんいます。 | 集まりを見て人数を述べる |
| He iti noa iho. | ほんの少しだけです。 | 量がすでに話題になっているときの返事 |
| Ngā tangata katoa. | 人々全員。 | 誰を含めるかを示すまとまり |
| Ētahi atu. | ほかにもいくつか。 | 品物などを追加で挙げる短い答え |
| He nui te kai. | 食べ物がたくさんあります。 | 食卓や持ち寄りの集まりで |
| He iti te wai. | 水が少ないです。 | 残っている量を伝える |
| Kei te tēpu ētahi pukapuka. | テーブルに本が何冊かあります。 | 何冊あるかは特定しない |
| Kei konei ngā pukapuka katoa. | 本は全部ここにあります。 | 対象の本がすべてそろっている |
| He whare nui tēnei. | これは大きな家です。 | 数ではなく大きさ |
| He whare iti tērā. | あれは小さな家です。 | 遠くの一軒について述べる |
| He pai ēnei pukapuka. | これらの本はいいですね。 | 手元の複数の本について |
| Kei hea ēnā pukapuka? | それらの本はどこにありますか。 | 相手側の本の所在を尋ねる |
| Homai ētahi atu. | もう少しください。 | 何を追加するか分かっている場面 |
| Mauria mai ngā pukapuka katoa. | 本を全部持ってきてください。 | 一部だけでなく全部を頼む |
He iti noa iho. の noa iho は「ほんの〜だけ」と量の小ささを際立たせます。「少しです」よりも「ほんの少しだけです」に近く、何が少ないのかは前後の会話に任せています。
Homai は「こちらにください」、mauria mai は「こちらへ持ってきて」という働きをする表現です。日本語訳には自然さのため「ください」を使っていますが、それだけでマオリ語の文が改まった敬語になるわけではありません。
よくある間違い
1.ngā を「たくさん」と同じ意味だと思う
- 意図と合わない言い方: ngā pukapuka だけで「本がたくさんあります」を言ったつもりになる。
- 言い直し: He nui ngā pukapuka. — 「本がたくさんあります。」
- 理由: ngā pukapuka 自体は正しいまとまりですが、示すのは複数であることです。数が多いと述べる nui は含まれていません。
2.水の量が多いので ngā を選ぶ
- 誤り: He nui ngā wai. を「水がたくさんあります」のつもりで使う。
- 正しくは: He nui te wai. — 「水がたくさんあります。」
- 理由: ここでは水を一つの量として扱います。ngā wai が別の文脈で成り立つ場合はありますが、単に一杯の水や貯めた水の量が多いことを言うための形ではありません。
3.「全部の」の語順をそのまま移す
- 誤り: ngā katoa pukapuka
- 正しくは: ngā pukapuka katoa — 「すべての本」
- 理由: この形では katoa を名詞の後ろに置きます。日本語の順番に引っ張られないようにしましょう。
4.ētahi に ngā を重ねる
- 誤り: ngā ētahi pukapuka
- 正しくは: ētahi pukapuka — 「何冊かの本」
- 理由: ētahi がすでに複数のものの指し方を示しています。同じ場所に ngā を重ねません。ngā ēnei pukapuka とせず ēnei pukapuka「これらの本」とするのも同じ考え方です。
5.tēnei に別の語を足して複数にする
- 誤り: tēnei mau pukapuka を「これらの本」のつもりで使う。
- 正しくは: ēnei pukapuka — 「これらの本」
- 理由: tēnei に対応する複数の形は ēnei です。tēnā → ēnā、tērā → ērā も対にして覚えます。
6.数の多さと物の大きさを取り違える
- 意図と合わない言い方: He whare nui tēnei. を「家がたくさんあります」の意味で使う。
- 言い直し: He nui ngā whare. — 「家がたくさんあります。」
- 理由: He whare nui tēnei. 自体は正しく、「これは大きな家です」という別の意味です。「家の数」なのか「一軒の大きさ」なのかを先に決めましょう。
使うときの注意
日本語の「少ししか」と「少しある」
He iti te wai. は、水の量が少ないことを述べます。日本語では状況によって「水は少しあります」とも「水が少ししかありません」とも訳せますが、iti だけで「不足して困っている」とまで決まるわけではありません。
同じように He iti noa iho. も、遠慮して量を小さく言う場合と、残量がわずかだと伝える場合があります。日本語訳の気持ちを、マオリ語の一語に全部押し込めないことが大切です。
「いくつか」と「少ない」は別のこと
ētahi pukapuka は「何冊かの本」と、ものを指します。一方、He iti ngā pukapuka. は「本が少ない」と、数の少なさを述べます。
「何冊か持ってきて」と頼むのに、最初から「少ない」と評価する必要はありません。まず ētahi を選び、数が少ないという情報そのものを伝えたいときに iti を使うと、使い分けがはっきりします。
口調は数量語だけでは決まらない
nui・iti・katoa・ētahi は日常でも文章でも使う基本語です。特にくだけた言い方や、格式の高い言い方に限定されるものではありません。依頼の丁寧さは、数量語よりも、頼み方全体や相手との関係で変わります。
もう一歩先へ:基本が定着してから読む補足
ここからは、初めから全部を使いこなす必要はありません。「名詞は変わらない」「katoa は全部」という基本を少し広げるための補足です。
名詞の形が変わる例もある
多くの名詞は pukapuka のように単数・複数で形が変わりません。ただし、よく使う語の中には、別の形や長母音で複数を示すものもあります。
| 単数 → 複数 | 日本語 | 覚え方 |
|---|---|---|
| te tamaiti → ngā tamariki | その子ども → その子どもたち | 語全体の形が変わる |
| te wahine → ngā wāhine | その女性 → その女性たち | 長母音に注意する |
これらは、すべての名詞に当てはめる語尾変化ではありません。冠詞などで数を示すのが基本で、よく使う例外は組み合わせで覚えます。「名詞は絶対に変化しない」と言い切らず、基本と個別の語形を分けておきましょう。
katoa は複数のもの以外にも使える
先ほどの te rā katoa「一日中」のように、katoa は一つのまとまりの全体にも使えます。また、人を指す語に添えることもできます。
- tātou katoa — 「私たちみんな」
tātou は、聞き手も含めた「私たち」を表す代名詞(名前の代わりに人や物を指す語)です。ここでも katoa は後ろに来ます。今は「ngā としか使えない語ではない」と分かれば十分です。
ētahi と ētahi atu の違い
ētahi pukapuka は「何冊かの本」、ētahi atu pukapuka は「ほかの本を何冊か・さらに何冊かの本」です。atu があると、すでに挙がったもの以外や、追加するものに目が向きます。
たとえば、最初の数冊を受け取った後に Homai ētahi atu. と言えば「もっとください」です。ここでの atu は、nui と同じ「多い」を意味しているわけではありません。量の多さではなく、「それに加えて」という関係を表しています。
ēnā は、必ず手の届く位置にあるとは限らない
ēnei・ēnā・ērā は位置関係から覚えるのが出発点ですが、会話では話題との距離にも関わります。ēnā は、相手が述べたことや相手側にある話題を受けることもあります。日本語の「それらの話」と同様、目の前に物がなくても使われます。
ただし、日本語の「それ」を見たら毎回 ēnā に置き換えればよいわけではありません。初めは物を指す基本の三組を確実にし、その後、会話の中で何を受けているかを確認しましょう。
練習のしかた
1.同じ物で「指し方」と「数の評価」を分ける
本を一冊、数冊と置き、te pukapuka「その本」、ngā pukapuka「その本々」、ētahi pukapuka「何冊かの本」、ngā pukapuka katoa「すべての本」と言ってみます。その後で He nui ngā pukapuka.「本が多い」、He iti ngā pukapuka.「本が少ない」を加えてください。「複数を指す」と「多い・少ないを述べる」が別の仕事だと実感できます。
2.日本語を見て、量か大きさかを先に決める
次の四つを、語順も含めて言ってみましょう。
- 水が多い。
- 本が少ない。
- これは大きな家です。
- 本は全部ここにあります。
答えの例は、順に He nui te wai. / He iti ngā pukapuka. / He whare nui tēnei. / Kei konei ngā pukapuka katoa. です。単語を思い出すだけでなく、なぜ te なのか、なぜ nui がその位置なのかを日本語で説明できるか確かめましょう。
3.「こ・そ・あ」を一つと複数で対にする
自分の手元、相手の手元、離れた場所に物を置き、tēnei → ēnei、tēnā → ēnā、tērā → ērā と交互に練習します。次に、それぞれの後ろに pukapuka「本」を付けてください。最後に何も見ずにつづりを書き、単数の t と長母音の横線を確認すると、見分けだけでなく書く力も定着します。
関連する項目
- 先に確認したい基本: 定冠詞 te・ngā — 特定の一つと複数をどう指すかを整理します。この数量表現を学ぶ土台です。