A1

マオリ語の存在・場所の表現:he と kei の使い分け

He me Kei (Rerenga Wāhi)

この記事は、Settemila Lingueのマオリ語文法ツリーの一部です。

まず押さえること

He kurī tēnā. は「あれは犬です」と種類を述べ、Kei te tēpu te pukapuka. は「本は机のところにあります」と場所を述べます。he はいつでも「ある・いる」を表す語ではなく、何かの種類を示したり、まだ特定していないものを話に出したりするときに使います。「どこですか」は Kei hea …?、新しく「〜がある」と紹介する形の一つは He … kei … です。

全体像:日本語の「です」と「あります」を組み替える

日本語では「犬です」「本があります」「人がいます」と、文の終わりを変えて伝えます。マオリ語では、こうした内容を表すのに、日本語の「です」「ある」「いる」に当たる動詞(動きや状態を表す語)を必ず置くわけではありません。文頭の語と、その後に並ぶまとまりが大切になります。

この項目は初級の A1 段階で学ぶ基礎です。旅行先でトイレを探す、家族の居場所を尋ねる、机の上の本について話すときにすぐ使えます。まずは「何なのかを言う」「どこなのかを言う」「何があるかを新しく伝える」の三つを分けて考えましょう。

日本語の「が」と「は」の違いは、考える手がかりになります。「本が一冊あります」は本の存在を新しく伝え、「その本は机にあります」は分かっている本の場所を伝えます。ただし、日本語の助詞とマオリ語の語が一対一で対応するわけではありません。日本語を一語ずつ置き換えるより、何を新しい情報として伝えるかを先に決めると組み立てやすくなります。

文の作り方と使い分け

1.he で「何なのか」を述べる

He kurī tēnā. — あれは犬です。

この文は、犬がどこかにいることを知らせるのではなく、指しているものが「犬という種類のもの」だと説明しています。kurī は「犬」、tēnā は「それ・そのもの」です。tēnā は基本的に聞き手の側のものを指しますが、日本語訳では場面に応じて「それ」「あれ」となります。

基本の並び方は、he + 種類・職業などを表す語 + 説明する相手やものです。

  • He pukapuka tēnei. — これは本です。
  • He kaiako ia. — その人は先生です。

tēnei は「これ」、ia は「その人・彼・彼女」です。ia 自体には男女の区別がありません。

ここで he は、不定冠詞(どれと決めずに名詞を示す語)として働きます。名詞とは、「犬」「本」「先生」のように、人・もの・種類などの名前を表す語です。日本語に同じ仕組みはないので、he だけを「一つの」や「あります」と暗記するのは避けましょう。He kaiako ia. の he は、先生が一人いると数えるための語ではありません。

2.kei で「どこにある・いる」を述べる

Kei te tēpu te pukapuka. — 本は机のところにあります。

基本の形は、kei + 場所 + そこにあるもの・いる人です。この文では、te tēpu が場所、te pukapuka が場所を説明されている本です。日本語とは違い、まず「机のところに」、次に「本が」という順で並びます。

kei を使うこの形では、人とものを区別して別の語にする必要はありません。

  • Kei te kāinga te tamaiti. — 子どもは家にいます。
  • Kei te kāinga te pukapuka. — 本は家にあります。

kāinga は「家・住まい」、tamaiti は「子ども」です。「いる」「ある」の区別は日本語訳の側で行います。

なお、kei te tēpu は、机を基準にした場所を表し、文脈によって「机のところに」「机で」「机の上に」と訳せます。必ず机の表面に載っていると細かく指定する形ではありません。「机の上」をはっきり言いたいときは、後で扱う kei runga i te tēpu を使えます。

3.te と ngā は、場所を説明するものにも付く

te は単数の、ngā は複数の定冠詞(話し手と聞き手がどれか分かるものに付ける語)です。日本語では訳に出ないことも多い語です。

  • Kei te tēpu te pukapuka. — その本は机のところにあります。
  • Kei te tēpu ngā pukapuka. — その本は何冊か、机のところにあります。

二つ目の文では、本が複数だと分かるのは ngā の部分です。pukapuka 自体はこの例では変わりません。また、本が複数になっても kei は変化しません。

場所の te tēpu と、ものの te pukapuka は別々のまとまりです。「文中に te は一度だけ」と考えず、「どの場所か」「何の場所を述べるのか」をそれぞれ組み立てます。

4.「ここ・そこ・あそこ」に置き換える

場所の名前を言わず、指して示すこともできます。

場所の表現 日本語 距離の目安
kei konei ここに 話し手の近く
kei konā そこに 聞き手の近く
kei korā あそこに 両者から離れたところ
  • Kei konei te pēke. — かばんはここにあります。
  • Kei konā te pukapuka. — 本はそこにあります。

日本語の「こ・そ・あ」の区別と並べると覚えやすい組です。ただし、「そこ」が会話の中で幅広く使われる日本語と完全に同じではないため、実際に誰の近くを指しているかも意識しましょう。

5.kei hea で場所を尋ねる

Kei hea te wharepaku? — トイレはどこですか。

hea は「どこ」です。場所を述べる部分を kei hea にすると、そのまま居場所を尋ねられます。日本語の「か」に当たる語を文末に足す必要はありません。

  • Kei hea ngā tamariki? — 子どもたちはどこにいますか。
  • Kei te kura ngā tamariki. — 子どもたちは学校にいます。

kura は「学校」、tamariki は tamaiti の複数形です。多くの名詞は複数でも同じ形ですが、この語は形も変わるものとして覚えましょう。

会話では、答えの ngā tamariki を繰り返さず、Kei te kura. — 学校にいます。 とだけ答えることもできます。何の話か共有されていれば、毎回すべてを言い直す必要はありません。

6.he … kei … で、新しく存在を伝える

He pukapuka kei runga i te tēpu. — 机の上に本があります。

この形では、先に he pukapuka で「本というもの」を紹介し、kei runga i te tēpu で場所を添えています。存在文(何かがある、誰かがいると知らせる文)の、分かりやすい形の一つです。

同じ場面でも、次の二つでは伝える中心が変わります。

  • He pukapuka kei runga i te tēpu. — 机の上に本があります。 本があることを知らせる。
  • Kei runga i te tēpu te pukapuka. — その本は机の上にあります。 話題の本の場所を知らせる。

日本語でも「本があります」と「本はここです」を使い分けます。この感覚を手がかりにしつつ、マオリ語では he と te、文全体の並び方も変わる点に注目してください。

7.「人が多い」は he nui で表せる

He nui ngā tangata i konei. — ここには人がたくさんいます。

この文は存在を伝える日本語に訳せますが、he nui をひとまとまりで見ることが重要です。nui には「大きい・多い」の意味があり、この例では人数の多さを述べています。ngā tangata が「人々」、i konei が「ここに・ここで」です。

つまり、He kurī tēnā. と He nui ngā tangata i konei. は、どちらも he で始まりますが、後に来るものの働きが違います。前者は種類を、後者は多さを述べます。「he があれば、すべて『あります』の文」とまとめないことが大切です。また、この例の he nui ngā tangata は、he と ngā を重ねて一つの名詞に付けているわけではありません。

場面で覚える例文

探し物をする場面、部屋の様子を伝える場面、ものの種類を確かめる場面を分けて読んでみましょう。runga は「上」、raro は「下」、roto は「中」を表します。

マオリ語 日本語 着目する点
He kurī tēnā. あれは犬です。 指しているものの種類を述べる
He pukapuka tēnei. これは本です。 目の前のものを説明する
He kaiako ia. その人は先生です。 職業を述べる
Kei te tēpu te pukapuka. 本は机のところにあります。 分かっている本の場所を述べる
Kei runga i te tēpu te kapu. カップは机の上にあります。 表面の上だとはっきり示す
Kei raro i te tēpu te kurī. 犬は机の下にいます。 下にいることを示す
Kei roto i te pēke te pukapuka. 本はかばんの中にあります。 内部にあることを示す
Kei te kāinga ngā tamariki. 子どもたちは家にいます。 複数の人にも同じ kei を使う
Kei konei te pēke. かばんはここにあります。 話し手の近くを指す
Kei hea te wharepaku? トイレはどこですか。 施設の場所を尋ねる
Kei hea tō pukapuka? あなたの本はどこにありますか。 tō pukapuka は「あなたの本」
He pukapuka kei runga i te tēpu. 机の上に本があります。 本の存在を新しく知らせる
He kurī kei waho. 外に犬がいます。 waho は「外」
He nui ngā tangata i konei. ここには人がたくさんいます。 人数の多さを述べる

例えば、図書館で借りた本が見つからないときは、Kei hea te pukapuka? — 本はどこですか。 と尋ね、Kei roto i te pēke. — かばんの中にあります。 と答えられます。一方、かばんを開けて初めて本に気づいたなら、He pukapuka kei roto i te pēke. — かばんの中に本があります。 と、存在を新しく知らせる言い方が合います。

よくある間違い

1.he をそのまま「あります」と置き換える

  • 誤り: He te pukapuka kei runga i te tēpu.
  • 修正: He pukapuka kei runga i te tēpu. — 机の上に本があります。
  • 理由: この形では he が pukapuka に付きます。同じ名詞に te を重ねません。話題の本の場所を言いたいなら、Kei runga i te tēpu te pukapuka. — その本は机の上にあります。 とします。

2.日本語の順に並べてしまう

  • 誤り: Te pukapuka te tēpu kei.
  • 修正: Kei te tēpu te pukapuka. — 本は机のところにあります。
  • 理由: 日本語の「本は/机に/あります」の順に単語を当てはめた形です。まずは kei + 場所 + もの・人 のまとまりで覚えましょう。別の語順が使われることもありますが、kei を日本語の動詞のように最後へ置くことはできません。

3.「上」「中」の後の i を落とす

  • 誤り: Kei roto te pēke te pukapuka.
  • 修正: Kei roto i te pēke te pukapuka. — 本はかばんの中にあります。
  • 理由: roto i te pēke が「かばんの中」という場所のまとまりです。runga i te tēpu — 机の上、raro i te tēpu — 机の下 も同じように、i まで含めて覚えます。

4.人とものに別の kei が必要だと思う

  • 誤り: Kei ngā pukapuka te tēpu. を「本は机のところにあります」のつもりで使う。
  • 修正: Kei te tēpu ngā pukapuka. — その本は何冊か、机のところにあります。
  • 理由: kei のすぐ後は場所です。複数だからといって、場所より先に ngā pukapuka を入れるわけではありません。人でもものでも、単数でも複数でも、この基本の並びは共通です。なお、誤ったつもりの文も別の状況では「机は本のところにある」という構造に読めるため、何を場所として置いたかを確認しましょう。

5.種類を否定する形を、居場所の否定に使う

  • 誤り: Ehara te pukapuka i te tēpu. を「本は机のところにありません」のつもりで使う。
  • 修正: Kāore te pukapuka i te tēpu. — 本は机のところにありません。
  • 理由: ehara を使う形は、種類や同一性を否定するためのものです。居場所を否定するときは、後述する kāore + もの・人 + i + 場所 の型を使います。日本語ではどちらも「〜ではありません」と言えるため、何を否定しているのかを区別しましょう。

使うときの注意

「机に」と「机の上に」は、必要に応じて言い分ける

Kei te tēpu te pukapuka. を自然な日本語で「本は机の上にあります」と訳せる場面はあります。ただし、形そのものが「上」を明示しているわけではありません。位置が重要なら Kei runga i te tēpu te pukapuka. — 本は机の上にあります。 と具体的に言えます。

同様に、Kei te kura ngā tamariki. — 子どもたちは学校にいます。 だけでは、教室の中なのか校庭なのかまでは指定しません。最初から細かい位置をすべて述べる必要はなく、相手が知りたい詳しさに合わせれば十分です。

普通の場所表現として使える

これらは、特別にくだけた言い方でも、改まった文章だけの言い方でもありません。Kei hea te wharepaku? — トイレはどこですか。 は場所を尋ねる通常の表現です。日本語訳を「どこ?」「どこですか」のどちらにするかは場面によりますが、マオリ語の形に日本語の丁寧語と同じ区別が含まれているわけではありません。

長母音の印を省かない

ngā、tēpu、kāinga、konā などの横線は、母音を長く発音することを示します。飾りではなく綴りの一部なので、読むときも書くときも保ちましょう。単語だけで練習するより、kei te kāinga — 家に のように短いまとまりで声に出すと定着しやすくなります。

一歩進んだ使い方:否定・時の違い・似た形

ここから先は、初めから全部使いこなす必要はありません。まず肯定文と Kei hea …? を使えるようにし、その後で読み返すと整理しやすい内容です。

1.「ない・いない」は、肯定文に否定語を足すだけではない

場所を否定する場合は、語順と場所を導く語も変わります。

  • Kei te kāinga te tamaiti. — 子どもは家にいます。
  • Kāore te tamaiti i te kāinga. — 子どもは家にいません。

kāore は否定を表す語です。ここでは kāore + もの・人 + i + 場所 となり、肯定文の kei をそのまま残す形ではありません。現在の話でも、この否定の型では場所の前に i が来ます。「i があれば必ず過去」と覚えてはいけません。

新しく存在を述べる文を否定するときには、kāore he … がよく使われます。

  • He pukapuka kei runga i te tēpu. — 机の上に本があります。
  • Kāore he pukapuka i runga i te tēpu. — 机の上には本がありません。

後者は「本というものがそこにはない」と言う形です。特定の一冊を探して「その本はそこにない」と言うなら、Kāore te pukapuka i runga i te tēpu. — その本は机の上にはありません。 と区別できます。

種類の否定は別の型です。

  • He kurī tēnā. — あれは犬です。
  • Ehara tēnā i te kurī. — あれは犬ではありません。

肯定文で同じ he が見えても、「種類の説明」か「存在の紹介」かによって否定の仕方が異なります。

2.過去の場所は i、未来の場所には hei が使える

kei の基本は、今の場所を述べる形です。過去や未来へ広げると、次のような対応が見られます。

マオリ語 日本語 時の捉え方
Kei te kāinga ia ināianei. その人は今、家にいます。 現在の場所
I te kāinga ia inanahi. その人は昨日、家にいました。 過去の場所
Hei te kāinga ia āpōpō. その人は明日、家にいる予定です。 未来にいる場所

ināianei は「今」、inanahi は「昨日」、āpōpō は「明日」です。未来の場所の hei は、予定やこれからいる場所を示すときに使えます。ただし、he と hei は別の語です。「先生です」の he を未来形として機械的に hei に替えればよい、という規則ではありません。

また、He nui ngā tangata i konei. — ここには人がたくさんいます。 の i konei は場所を添える部分で、それだけで文を過去にするわけではありません。語の位置と、どのまとまりに属するかを合わせて読みましょう。

3.kei te の後ろが動作なら、別の構文

Kei te kai te tamaiti. — 子どもは食事をしています。

この kei te kai は、動作が進んでいることを表す形です。一方、Kei te kura te tamaiti. — 子どもは学校にいます。 は、場所を表します。前者では kai が「食べる」という動作、後者では te kura が「学校」という場所です。

見た目がどちらも kei te で始まるからといって、すべてを「〜にいる」か、すべてを「〜している」と訳すことはできません。kei te の二語だけで判断せず、その後が場所なのか、動作なのかを見るのが大切です。

4.場所だけを示す短い答えや、指示する表現

Kei hea te pukapuka? — 本はどこですか。 に対して、Kei konei. — ここにあります。 と答えられます。これは、話題の本が分かっているため、その部分を省いた答えです。

これに対して、Anei te pukapuka. — ほら、ここに本があります/はい、本をどうぞ。 は、実物を示したり差し出したりする場面に合います。単に地図上の場所を説明するのと、目の前にあるものを相手に示すのとでは、よく使う表現も違います。まずは場所を説明する kei の型を覚え、こうした表現は場面ごとに増やしていきましょう。

練習のこつ

1.同じ本で「存在」と「場所」を言い分ける

机の上に本を置き、初めて部屋を見る人に伝えるつもりで、He pukapuka kei runga i te tēpu. — 机の上に本があります。 と言います。次に、その本を探している人に答えるつもりで、Kei runga i te tēpu te pukapuka. — その本は机の上にあります。 と言ってみましょう。日本語訳だけでなく、he と te、文の出だしの違いを意識します。

2.質問の場所を、答えの場所に置き換える

Kei hea te pēke? — かばんはどこですか。 に対し、Kei konei. — ここにあります。、Kei raro i te tēpu. — 机の下にあります。、Kei roto i te kāpata. — 戸棚の中にあります。 と答えます。kāpata は「戸棚」です。最初は短い答えで十分なので、実際に指を差しながら練習すると、場所の表現を覚えやすくなります。

3.否定は、肯定と対にして覚える

Kei te kāinga ia. — その人は家にいます。 と Kāore ia i te kāinga. — その人は家にいません。 を一組で書き出します。「kāore を付け足す」ではなく、「語順も含めて別の型へ切り替える」と捉えましょう。最後に、自分がよく使う人やものに入れ替えて、場所を尋ねる文、肯定の答え、否定の答えを一組ずつ作ってみてください。

関連する文法

  • 先に確認したい項目: 定冠詞 te・ngā — 単数と複数、どのものを指しているかを示す基本です。he で新しく紹介する場合と、te・ngā で場所を述べる場合の違いを理解する助けになります。

前提概念

マオリ語の定冠詞 te・ngāA1

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