ウルドゥー語の指示代名詞:یہ・وہの使い方
اشاریہ ضمیر
この記事は、Settemila Lingueのウルドゥー語文法ツリーの一部です。
まず押さえること
ウルドゥー語では、近くのものを یہ(イェー)、離れたものを وہ(ヴォー) で指します。この二つは「これ・それ・あれ」にも「この・その・あの」にもなり、単数と複数で綴りは変わりません。ただし、日本語の「に・で・から」に当たる語を後ろにつけるときは、指す距離と数に応じて اِس・اُس・اِن・اُن という形に変わります。
全体像:日本語の「こそあど」とどう違う?
指示代名詞とは、名前を言わずに「これ」「あれ」のように相手にものや人を示す言葉です。ウルドゥー語の یہ と وہ は、買い物で商品を選ぶとき、写真の人物について尋ねるとき、さっきの話を受けるときなどに使います。初級の最初の段階で覚えておくと、知らない名詞があっても「これは何ですか」「それをください」と伝えられます。
日本語では、単独で使う「これ」と、名詞(もの・人・事柄の名前)の前に置く「この」を区別します。ウルドゥー語では、どちらも یہ です。たとえば یہ کتاب ہے۔ は「これは本です」、یہ کتاب اچھی ہے۔ は「この本はよいです」。同じ語が、ものの代わりにも、ものの名前に添える言葉にもなります。
もう一つ大きな違いは、日本語の「こ・そ・あ」の三つに対して、基本の区別が「近い・遠い」の二つであることです。وہ は「あれ」だけでなく、場面によって「それ」、話題に出た人なら「あの人・彼・彼女」にもなります。日本語訳の一語に固定せず、「何を、どの距離感で指すか」を考えるのがコツです。
形と文の作り方
1.基本形は近いیہと遠いوہ
まずは、後ろに「に・から」などの語が直接つかない形を覚えます。これを直格(基本の形)と呼びます。
| ウルドゥー語 | 日本語の目安 | 使い分け |
|---|---|---|
| یہ | これ・これら/この・これらの | 話し手に近いものや人 |
| وہ | それ・あれ・それら・あれら/その・あの | 話し手から離れたものや人、すでに話題に出た対象 |
یہ はおおよそ「イェー」、وہ は「ヴォー」のように聞こえます。カタカナはあくまで手がかりです。表記だけから日本語の音を当てはめすぎず、音声でも確かめましょう。
日本語の「それ」は聞き手の近くのものにも使いますが、ウルドゥー語に「聞き手側専用」の第三の基本形があるわけではありません。相手の手元の本を、話し手から離れた本として وہ کتاب「その本」と呼べます。一方、二人で目の前の本を見ているなら یہ کتاب「この本」となることもあります。
2.「これは本」と「この本」は語順で見分ける
次の二つを比べてください。
| ウルドゥー語 | 日本語 | 仕組み |
|---|---|---|
| یہ کتاب ہے۔ | これは本です。 | یہが単独で対象を示し、その対象が本だと説明する |
| یہ کتاب اچھی ہے۔ | この本はよいです。 | یہ کتابで「この本」というまとまりを作る |
| وہ لڑکا کون ہے؟ | あの男の子は誰ですか。 | وہ لڑکاで「あの男の子」というまとまりを作る |
二番目のように名詞に添えて使う働きを、連体用法(名詞を指し示して限定する使い方)といいます。難しい名前を覚えるより、یہだけなら「これ」、یہ+名詞なら「この〜」にもなると理解すれば十分です。ただし、最初の文のように یہ+名詞+ہے が「これは〜です」となることもあるので、隣の語だけで機械的に判断せず、文全体を読みましょう。
日本語には「このは私のです」とは言えないという制約がありますが、ウルドゥー語には「これ用の形」と「この用の形」を分ける必要がありません。
3.単数・複数でも、男性・女性でも形は同じ
単数は一つ・一人、複数は二つ以上・二人以上を表します。یہ と وہ 自体には、この区別が現れません。周りの名詞や動詞(動作・状態を述べる語)を見て判断します。
| ウルドゥー語 | 日本語 | 見分ける手がかり |
|---|---|---|
| یہ کتاب ہے۔ | これは本です。 | کتابが一冊の本、ہےが単数の「です」 |
| یہ کتابیں ہیں۔ | これらは本です。 | کتابیںが複数の本、ہیںが複数の「です」 |
| وہ لڑکا ہے۔ | あれは男の子です。 | لڑکاは男性名詞 |
| وہ لڑکی ہے۔ | あれは女の子です。 | لڑکیは女性名詞 |
文法上の性(名詞が男性・女性のどちらの種類に属するか)によって、یہ や وہ が別の形になることもありません。ただし、形容詞(性質を述べる語)や動詞の一部は性や数に合わせて変わります。
- یہ لڑکا اچھا ہے۔ — この男の子はよい子です。
- یہ لڑکی اچھی ہے۔ — この女の子はよい子です。
変わったのは「よい」を表す اچھا/اچھی であり、یہ ではありません。「指す語は同じでも、その後ろは対象に合わせる」と分けて覚えましょう。
4.後置詞の前では斜格になる
後置詞とは、日本語の助詞に似て、名詞などの後ろに置いて「に・から・で」といった関係を示す語です。たとえば کو は「に」や動作の対象を示し、سے は「から・で」、میں は「中に・中で」を表します。
こうした語をつけるとき、指示語は斜格(後置詞につなぐための形)になります。基本の対応は次の四つです。
| 指す距離と数 | 直格 | 斜格 | 日本語の目安 |
|---|---|---|---|
| 近い・単数 | یہ | اِس | これに/この〜に |
| 遠い・単数 | وہ | اُس | それ・あれに/その・あの〜に |
| 近い・複数 | یہ | اِن | これらに/これらの〜に |
| 遠い・複数 | وہ | اُن | それら・あれらに/それらの〜に |
ここでは発音を示すため、短母音を表す小さな記号をつけています。اِس は「イス」、اُس は「ウス」、اِن は「イン」、اُن は「ウン」が目安です。普通の文章ではこの記号を省き、単数の二つをどちらも اس、複数の二つをどちらも ان と書くことがよくあります。
つまり、書かれたاسだけで「近い」とも「遠い」とも決められません。発音と文脈では区別があります。ان も同じです。基本形では数が表記に出ず、斜格では数が形に現れる、という点にも注目してください。
5.名詞が間にあっても形が変わる
「この本に」のような場合も、後置詞は「この本」というまとまり全体につきます。そのため、指示語も斜格にします。
- یہ کتاب — この本
- اِس کتاب میں — この本の中に
- وہ لڑکا — あの男の子
- اُس لڑکے کو — あの男の子に/あの男の子を
- وہ لوگ — あの人たち
- اُن لوگوں کو — あの人たちに/あの人たちを
名詞自身も変わることがあります。上の例では لڑکا → لڑکے、لوگ → لوگوں がその変化です。一方、کتاب はこの単数の形では見た目が変わりません。名詞が変わらないからといって、یہ のままでよいわけではありません。
「後置詞が直後にあるか」ではなく、「後置詞がどのまとまりを受けているか」を見ると、長めの文でも迷いにくくなります。
場面の中で覚える例文
指示語が単独なのか、名詞についているのかにも注目して読んでください。後半の例では、読み分けがわかるように短母音の記号を補っています。
| ウルドゥー語 | 日本語 | ポイント |
|---|---|---|
| یہ کیا ہے؟ | これは何ですか。 | 名前のわからないものを尋ねる |
| یہ کتاب ہے۔ | これは本です。 | 対象が何かを説明する |
| یہ کتاب میری ہے۔ | この本は私のです。 | یہ کتابで「この本」 |
| وہ لڑکا کون ہے؟ | あの男の子は誰ですか。 | 人を指して尋ねる |
| یہ جوتے کتنے کے ہیں؟ | この靴はいくらですか。 | 複数でもیہのまま |
| وہ کتابیں نئی ہیں۔ | あの本はどれも新しいです。 | وہが複数の本を指す |
| یہ میری بہن ہے۔ | こちらは私の姉です。 | 人の紹介にも使える。بہنは姉・妹の両方を表す |
| وہ گھر پر ہے۔ | あの人は家にいます。 | وہが人を指す |
| اس کو بلاؤ۔ | あの人を呼んで。 | اسは文脈により「この人」にもなる。呼びかけはくだけた形 |
| ان لوگوں کو دیکھو۔ | あの人たちを見て。 | ان لوگوںは文脈により「この人たち」にもなる |
| اِس کتاب میں تصویریں ہیں۔ | この本には絵があります。 | 名詞の後ろのمیںに合わせてیہがاِسになる |
| اُس دکان سے دودھ لے آؤ۔ | あの店で牛乳を買ってきて。 | اُسが遠い店を指す。親しい相手への依頼 |
| اِن بچوں کو پانی دو۔ | この子たちに水をあげて。 | 近い・複数の斜格 |
| اُن سے بات کیجیے۔ | あの人たちと話してください。 | 遠い・複数の斜格。依頼は丁寧な形 |
日本語訳では自然さを優先して「本」「靴」としていますが、ウルドゥー語の形には複数であることが示されている例があります。また وہ گھر پر ہے۔ は、性別がわからなくても使えます。「彼」と訳すか「彼女」と訳すかは وہ という語だけでは決まりません。
よくある間違い
1.「複数だからان」としてしまう
- 誤り: ان کتابیں ہیں۔
- 正しくは: یہ کتابیں ہیں۔ — これらは本です。
- 理由: اِن/اُن は単なる複数形ではなく、複数の斜格です。ここには後置詞がなく、基本形の یہ を使います。離れた本なら وہ کتابیں ہیں۔「それらは本です」とします。
2.後置詞の前でもیہをそのまま使う
- 誤り: یہ کو دیکھو۔
- 正しくは: اِس کو دیکھو۔ — これを見て。
- 理由: کو につなぐため、یہ を単数の斜格 اِس に変えます。複数の「これらを見て」なら اِن کو دیکھو۔ です。
3.間に名詞があると斜格への変化を忘れる
- 誤り: وہ لڑکا کو بلاؤ۔
- 正しくは: اُس لڑکے کو بلاؤ۔ — あの男の子を呼んで。
- 理由: کو は「あの男の子」というまとまり全体につきます。وہ → اُس と لڑکا → لڑکے の両方が必要です。日本語の「あの男の子を」では「あの」が変わらないため、特に気をつけたい点です。
4.複数の対象にہےを使う
- 誤り: یہ کتابیں ہے۔
- 正しくは: یہ کتابیں ہیں۔ — これらは本です。
- 理由: یہ は数によって変わらなくても、「です」に当たる形は変わります。基本は単数 ہے、複数 ہیں です。指示語だけでなく文の最後も確認しましょう。
5.「ここ」をیہだけで表そうとする
- 誤り: یہ آؤ۔〔「ここに来て」のつもりで〕
- 正しくは: یہاں آؤ۔ — ここに来て。
- 理由: یہ は「これ・この」、یہاں は場所の「ここ」です。同じように、وہ「それ・あれ」と وہاں「そこ・あそこ」は別の語です。「これがほしい」のか「ここにいる」のかを区別してください。
使うときの注意
人にも使うが、日本語の「これ」と同じ響きではない
یہ میری بہن ہے۔ の یہ を字面どおり「これは」とすると、日本語では人を物扱いするように聞こえます。しかし、ウルドゥー語の یہ 自体は、人を紹介するときにも普通に使う語です。日本語では「こちらは私の姉です」のように訳すと自然です。
反対に、指示語を使えば自動的に丁寧になるわけでもありません。本人を目の前にしてぶしつけに指さす、見知らぬ人にくだけた命令をする、といった行動は別の問題です。相手や場面に応じて、名前、肩書、丁寧な動詞の形も使いましょう。
命令・依頼の丁寧さは動詞にも表れる
例文の بلاؤ「呼んで」、دیکھو「見て」、دو「あげて」は、親しい相手などに使う形です。丁寧に頼むなら、たとえば اِس کو دیکھیے۔「これをご覧ください」のようにします。
この違いは指示語そのものの違いではありません。初めは「これを見て」と「これをご覧ください」で اِس کو が共通し、後ろの動詞が変わることに気づけば十分です。
目の前にない対象も指せる
وہ は、今は見えていなくても、すでに会話に出た人物やものを受けられます。「昨日会った人は?」と話したあとなら、その人を وہ で受けることができます。物理的な遠さだけでなく、「話の中で、どれを指しているか」にも注意しましょう。
日本語でも「その話」「あのとき」の選択には、記憶や相手との共有の程度が関わります。ただし、その感覚がそのまま一対一で対応するわけではありません。まとまった会話の中で、何を受けているかを確認するのがおすすめです。
もう一歩先へ:敬意・所有・強調
ここからは、基本の二語に慣れてから読めばよい内容です。初めから全部を使いこなす必要はありませんが、文章や会話で出会ったときの手がかりになります。
一人でもہیںを使う敬意表現
ウルドゥー語では、敬意を示すために、一人の人に複数と同じ形を使うことがあります。そのため、یہ/وہ+ہیں を見ただけで「必ず複数の人」とは言い切れません。
- یہ میرے استاد ہیں۔ — こちらは私の先生です。
- وہ میرے والد ہیں۔ — あちらは私の父です。
- اُن سے بات کیجیے۔ — あの方と話してください。
最後の文の اُن は、複数の「あの人たち」を指すことも、敬意を表して一人の「あの方」を指すこともできます。数は周囲の会話で判断します。基本の表はそのまま覚え、その上に「人への敬意では複数形を借りることがある」と付け足しましょう。
「この人の」は斜格に所有の語をつける
所有(誰のものかという関係)を表す کا/کی/کے も、斜格の後ろに続きます。
- اِس کا نام کیا ہے؟ — この人の名前は何ですか。
- اُس کی کتاب یہاں ہے۔ — あの人の本はここにあります。
- اِن کے بچے یہاں ہیں۔ — この人たちの子どもはここにいます。
کا/کی/کے の形は、持ち主が男性か女性かではなく、基本的には後ろに続く「持たれているもの」の性や数などに合わせます。たとえば اُس کی کتاب は「あの男性の本」にも「あの女性の本」にもなります。کتاب「本」が女性名詞なので کی を使うためです。
また、اِس کا نام は、動物や物を指して「これの名前」と言う場合にも使えます。人だけの表現ではありません。
کوと結びついた別の形
単独の代名詞(名詞の代わりに使う語)に کو がつく場合には、次の形もよく使います。
| 分けて書く形 | 対応する形 | 日本語の目安 |
|---|---|---|
| اِس کو | اِسے | これに・これを/この人に・この人を |
| اُس کو | اُسے | それに・それを/あの人に・あの人を |
| اِن کو | اِنہیں | これらに・これらを/この人たちに・この人たちを |
| اُن کو | اُنہیں | それらに・それらを/あの人たちに・あの人たちを |
- اُسے بلاؤ۔ — あの人を呼んで。
- اِنہیں پانی دو۔ — この人たちに水をあげて。
普通の文章ではここでも短母音の記号が省かれるため、近い・遠いの二つが同じ綴りになることがあります。まず اس کو/ان کو の構造がわかれば十分です。
この置き換えは、名詞を挟む場合にそのまま使えるわけではありません。「この本を」は اِس کتاب کو であり、اِسے کتاب として「この本を」の意味にはできません。
「まさにこれ」を表す強調
同じ対象をはっきり選び出すときには یہی「まさにこれ・この〜こそ」、وہی「まさにそれ・あの同じ〜」がよく使われます。
- مجھے یہی کتاب چاہیے۔ — 私がほしいのは、まさにこの本です。
- یہ وہی کتاب ہے۔ — これは例の、あの本です。
一番目は、ほかの本ではなくこの本を選ぶ言い方です。二番目は、前に話した本、以前見た本などと同じ本だと示します。وہی を常に「あれだけ」と訳すと、この「同じもの・例のもの」という意味を見落としてしまいます。
「〜する人が…」の文につながるوہ
さらに進むと、جو「〜する人・もの」と وہ を組み合わせ、対象を説明してから受ける文に出会います。
- جو محنت کرتا ہے، وہ کامیاب ہوتا ہے۔ — 努力する人は成功します。
ここでの وہ は「あそこにいる人」を指しているのではなく、前半の「努力する人」を受けています。これは関係節(名詞に当たる人やものを、文の形で説明する部分)の学習につながります。指示語には、目の前の対象を指す働きだけでなく、前に述べた内容を受け直す働きもある、と知っておきましょう。
練習のコツ
- 同じ物で三つの文を作る。 手元の本を見ながら یہ کتاب ہے۔「これは本です」→ یہ کتاب میری ہے۔「この本は私のです」→ اِس کتاب میں تصویریں ہیں۔「この本には絵があります」と言ってみましょう。「これ」と「この」の共通性、後置詞による形の変化を一緒に練習できます。次に本を離し、وہ/اُس に替えます。
- 数と形を別々に確認する。 一冊の本と数冊の本を並べ、基本形では یہ/وہ が変わらず、کتاب/کتابیں と ہے/ہیں が変わることを確認します。その後で اِس کتاب میں/اِن کتابوں میں「この本の中に/これらの本の中に」を比べると、斜格の単複も整理できます。
- 綴りに頼らず、音と指す先を結びつける。 اس/ان を見つけたら、「何を指すか」「一つか複数か」「近いか遠いか」を確認しましょう。音声がある場合は「イス・ウス」「イン・ウン」を聞き分け、なぜその形なのかを短く説明してみてください。
関連する文法項目
- 人称代名詞と敬意表現 — یہ・وہが「この人・あの人」を指すときや、一人に複数形を使う場合をさらに学べます。
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- 基本の後置詞 — کو・سے・میںなどが表す関係を確認できます。
- 直格と斜格 — اِس کتاب、اُس لڑکے、اِن لوگوںのようなまとまりの作り方を整理できます。
- 名詞の文法上の性 — 指示語は変化しなくても、周りの形容詞や所有の表現が男性・女性に応じて変わる仕組みを確認できます。