ノルウェー語の名詞化:動作・性質を名詞で表す
Nominalisering
この記事は、Settemila Lingueのノルウェー語文法ツリーの一部です。
まず押さえること
ノルウェー語の名詞化とは、動作や性質を「改善」「決定」「美しさ」のような名詞にして表すことです。代表的な形には、forbedre → forbedring(改善する→改善)、bestemme → bestemmelse(定める→規定)、skjønn → skjønnhet(美しい→美しさ)があります。語尾は自由に付け替えられるわけではなく、できた名詞は冠詞や前置詞と一緒に覚える必要があります。名詞化は報告書などで役立ちますが、誰が何をしたかを明確に伝えるなら、動詞を使った文のほうが適切な場合もあります。
全体像
名詞とは、人・物だけでなく、出来事や考えもひとまとまりとして表す言葉です。動詞(動作や変化を表す言葉)の forbedre「改善する」を forbedring「改善」に、形容詞(性質や状態を表す言葉)の trygg「安心できる」を trygghet「安心・安全」に変えると、その動作や性質について話題にできます。このように、別の種類の言葉や文の内容を名詞として扱うことを名詞化といいます。
日本語でも「市が道路を整備した」を「市による道路の整備」と言い換えられます。ノルウェー語にも同じ発想があり、行政文書、研究報告、職場での説明などでよく使われます。C1では、単語を作るだけでなく、文章の焦点をどこに置くか、書き手が責任の所在を明らかにしているか、といった点まで読み取ることが大切です。
ただし、日本語の「〜すること」と常に一対一で対応するわけではありません。ノルウェー語では、出来上がった名詞を使う方法と、å lese「読むこと」のように動詞の基本の形を使う方法を区別します。また、日本語にはない文法上の性や、特定のものを示す語尾も必要です。以下では主にブークモールの形を扱います。
形と文の組み立て方
1.動詞から作る -ing・-ning・-else
接尾辞とは、語の末尾に付いて意味や言葉の種類を変える部分です。動作を名詞にする代表的な接尾辞には、-ing、-ning、-else があります。ただし、「どの動詞にも同じ接尾辞を付ければよい」という仕組みではありません。
| 元の動詞 | 名詞 | 意味の対応 |
|---|---|---|
| lese | lesing | 読む→読むこと・読書という活動 |
| svømme | svømming | 泳ぐ→泳ぐこと・水泳 |
| forbedre | forbedring | 改善する→改善 |
| utvikle | utvikling | 発展させる・発展する→発展・開発 |
| beslutte | beslutning | 決定する→決定 |
| undersøke | undersøkelse | 調査する・検査する→調査・検査 |
| forstå | forståelse | 理解する→理解 |
| tillate | tillatelse | 許可する→許可 |
Lese → lesing のように語末の -e を取って -ing を付ける形は、新しい語にも比較的広く使える型です。一方、undersøkelse や forståelse などは、語全体を覚えたほうが確実です。Forbedring や utvikling も、見た目だけから -ning 型だと判断せず、forbedre、utvikle と対応させて覚えましょう。
とくに beslutning は -ning の語です。-else の例ではありません。また、名詞化にはつづりの変化が伴う場合もあります。Svømme からは svømming となり、mm は残ります。「語尾だけを足す練習」にせず、辞書で動詞と名詞の両方を確認すると誤りを防げます。
2.形容詞から作る -het
-het は、性質を抽象的に表す名詞を作ります。日本語の「〜さ」に近いこともありますが、訳語は「安全」「自由」「可能性」など、単語ごとに異なります。
| 元の形容詞 | 名詞 | 意味の対応 |
|---|---|---|
| trygg | trygghet | 安心できる・安全な→安心・安全 |
| sikker | sikkerhet | 安全な・確かな→安全・確実性 |
| fri | frihet | 自由な→自由 |
| mulig | mulighet | 可能な→可能性・機会 |
| skjønn | skjønnhet | 美しい→美しさ |
| tydelig | tydelighet | 明確な→明確さ |
Skjønnhet「美しさ」は skjønn と結び付けて覚えます。日常的な「美しい」には vakker もよく使いますが、そこから自由に同じ型の語を作ることはできません。意味の近い形容詞同士でも、同じ接尾辞が使えるとは限らないのです。
また、すべての性質の名詞が -het で終わるわけでもありません。Sterk → styrke(強い→強さ)、varm → varme(暖かい→暖かさ・熱)のような組み合わせもあります。まず頻出語の対応を身に付け、未知の形は推測だけで書かないようにしましょう。
3.名詞になったら、名詞の形で使う
できた語には文法上の性(冠詞や形容詞の形を決める名詞の分類)があり、単数・複数の形もあります。不定形はまだ特定されていないものを、定形はどのものか分かっているものを示す形です。
次は、ブークモールで使える代表的な形です。
| 単数不定形 | 単数定形 | 複数不定形 | 複数定形 | 意味 |
|---|---|---|---|---|
| en forbedring | forbedringen | forbedringer | forbedringene | 改善 |
| en beslutning | beslutningen | beslutninger | beslutningene | 決定 |
| en undersøkelse | undersøkelsen | undersøkelser | undersøkelsene | 調査・検査 |
| en mulighet | muligheten | muligheter | mulighetene | 可能性・機会 |
-ing の語には女性名詞として使えるものもあります。たとえば utviklingen と utviklinga はどちらもブークモールの形です。ここでは学習の見通しをよくするため、表では en と -en の組み合わせを使っています。読み物で -a が出ても、別の意味の語だと考える必要はありません。
一方、抽象的な内容はいつでも数えられるわけではありません。Trygghet er viktig. は「安心は大切だ」で、安心という性質一般を指すため、冠詞はありません。En mulighet「一つの可能性・機会」や tre forbedringer「三つの改善点」のように、個々のものとして捉えられるときは数えられます。名詞化したから冠詞が必須になるのではなく、その場面でどう捉えるかが重要です。
4.元の文にあった「何を」をつなぐ
動詞を使う文では、動作の対象をそのまま後ろに置けることがあります。しかし、名詞化した後は、前置詞(名詞の前に置いて関係を示す言葉)などでつなぎ直します。
- Vi forbedrer systemet. — 私たちはシステムを改善しています。
- Forbedringen av systemet tar tid. — システムの改善には時間がかかります。
最初の文の systemet は目的語、つまり「何を改善するか」を示す部分です。名詞 forbedringen の後では、av systemet「システムの」という形になります。日本語では「システムを」から「システムの」に変わると考えるとつかみやすいでしょう。
ただし、日本語の「の」をすべて av にできるわけではありません。名詞と一緒に使う前置詞は、関係によって変わります。
| 名詞を含む表現 | 日本語 | 関係 |
|---|---|---|
| forbedring av systemet | システムの改善 | 改善される対象 |
| forståelse av teksten | 文章の理解 | 理解する対象 |
| tillatelse til å bygge | 建設する許可 | 許可される行為 |
| tillit til ledelsen | 経営陣への信頼 | 信頼の向かう相手 |
| forskjellen mellom forslagene | 提案間の違い | 比較する二つ以上のもの |
前置詞までを一つの組み合わせとして覚えると、単語だけを覚えた場合より実際に使いやすくなります。
5.「誰が」を残すか、省くか
Kommunen undersøker saken.「自治体がその件を調査しています」には、主語(この文では、調査をする側を示す部分)の kommunen があります。これを undersøkelsen av saken「その件の調査」にすると、調査者は示されません。
調査者も必要なら、kommunens undersøkelse av saken「自治体によるその件の調査」と書けます。Kommunens の -s は、持ち主や関係する主体を示す形です。この形を名詞の前に置く場合は、undersøkelsen ではなく undersøkelse を使います。
- Kommunens undersøkelse av saken tok to måneder. — 自治体によるその件の調査には二か月かかりました。
名詞化には「情報を短くまとめる働き」と「行為者を見えにくくする働き」の両方があります。必要な情報まで消していないかを確認しましょう。
文脈の中で見る例文
最初の二つは、名詞のまとまりと、それを文にした形の対です。見出しでは名詞のまとまりだけでも使えますが、通常の説明文には文の骨組みが必要です。
| ノルウェー語 | 日本語 | 注目する点 |
|---|---|---|
| Forbedringen av systemet. | システムの改善。 | 見出しなどに使う名詞のまとまり |
| Forbedringen av systemet tok tre måneder. | システムの改善には三か月かかりました。 | 名詞のまとまりを主語にした文 |
| Beslutningen ble tatt. | 決定が下されました。 | 誰が決めたかは示していない |
| Utviklingen går raskt. | 発展は急速に進んでいます。 | 変化の進み方を話題にする |
| Skjønnheten i naturen. | 自然の中の美しさ。 | 文脈に応じて見出しなどに使える |
| Vi trenger en grundig undersøkelse av saken. | 私たちはその件を徹底的に調査する必要があります。 | 日本語では動詞を使うと自然なこともある |
| Lesing krever konsentrasjon. | 読書には集中力が必要です。 | 活動一般を表し、冠詞を付けない |
| Svømming er god trening. | 水泳はよい運動になります。 | 活動名としての名詞化 |
| Barn trenger trygghet. | 子どもには安心できる環境が必要です。 | 抽象的な性質を表す |
| Det er en tydelig forbedring i kvaliteten. | 品質には明らかな改善が見られます。 | 変化が見られる面を i で示す |
| Vi fikk tillatelse til å bruke rommet. | 私たちはその部屋を使う許可を得ました。 | tillatelse til と動詞を組み合わせる |
| De to undersøkelsene ga ulike resultater. | その二つの調査は異なる結果を示しました。 | 個々の調査として複数形にする |
| Kommunens vurdering av forslaget er offentlig. | 自治体によるその提案の評価は公開されています。 | 評価する側と対象を両方示す |
| Etter en grundig vurdering bestemte vi oss for å vente. | 十分に検討したうえで、私たちは待つことにしました。 | 前置詞の後に検討という名詞を置く |
Beslutningen ble tatt. の ble tatt は、受け身(何かが「される」という表し方)です。Beslutningen はすでに名詞ですが、文全体にも受け身を使えるので、この二つは別の仕組みだと分けて考えましょう。
よくある間違い
1.接尾辞を自由に付け替える
- 誤り: Vi tok en besluttelse.
- 正しくは: Vi tok en beslutning. — 私たちは決定を下しました。
「決定」には beslutning を使います。意味が似ているからといって、好きな接尾辞に変えることはできません。Ta en beslutning「決定を下す」のように、一緒に使う動詞も含めて覚えましょう。
2.動詞の目的語をそのまま後ろに置く
- 誤り: Forbedringen systemet tok tid.
- 正しくは: Forbedringen av systemet tok tid. — システムの改善には時間がかかりました。
Forbedre systemet「システムを改善する」は動詞の組み合わせです。名詞にしたら、ここでは av が必要です。日本語でも「改善する」と「改善の対象」では言葉のつながりが変わるのと同じく、文の組み立てを見直します。
3.所有を示す -s の後でも定形にする
- 誤り: Kommunens vurderingen er ferdig.
- 正しくは: Kommunens vurdering er ferdig. — 自治体の評価は完了しています。
前に kommunens を置く形では、名詞に定形の -en を付けません。名詞化に特有の規則ではありませんが、報告書でよく使う組み合わせなので注意が必要です。
4.形容詞だけで「その性質」を表そうとする
- 誤り: Trygg er viktig for barn.
- 正しくは: Trygghet er viktig for barn. — 安心は子どもにとって大切です。
Trygg は「安心できる」という形容詞です。「安心というもの」を文の話題にするなら、名詞 trygghet を使えます。一方、Det er viktig at barn er trygge.「子どもたちが安心していられることが大切です」のように、文で説明する方法もあります。
5.名詞に動詞の修飾の仕方を持ち込む
- 誤り: en grundig undersøke av saken
- 正しくは: en grundig undersøkelse av saken — その件についての徹底的な調査
Undersøke は動詞で、冠詞 en と組み合わせる名詞にはなりません。動詞のままなら å undersøke saken grundig「その件を徹底的に調査する」とします。Grundig は前者では調査の性質を、後者では調査するやり方を表しています。
使い分けと文章の調子
名詞化は「堅い文章専用」ではない
Beslutning「決定」、mulighet「可能性・機会」、trening「運動・練習」などは日常会話でも普通に使います。名詞化された語が一つあるだけで、不自然に堅くなるわけではありません。文章が重くなりやすいのは、抽象的な名詞を重ね、意味の薄い動詞でつなぐときです。
- Vi gjennomførte en vurdering av behovet for en forbedring av systemet. — 私たちはシステム改善の必要性について評価を実施しました。
- Vi vurderte om systemet burde forbedres. — 私たちはシステムを改善すべきか検討しました。
前者は評価という作業を実施したことに焦点を置き、後者は何を検討したかを直接伝えます。前者を必ず誤りと考える必要はありませんが、説明が長く感じられたら、名詞の一部を動詞に戻すと読みやすくなります。
日本語の「実施」「実現」をそのまま重ねない
日本語の報告書には「検討を実施する」「改善の実現を目指す」のような表現がよくあります。その調子に合わせてノルウェー語でも名詞を増やすと、自然な文章になるとは限りません。まず「誰が、何をするのか」を動詞で書き、名詞化する理由がある部分だけを書き換える方法が有効です。
また、ta en beslutning「決定を下す」のように定着した組み合わせは自然です。すべてを短い動詞に置き換える必要はなく、「普通の言い方なのか」「不要に回りくどいのか」を区別しましょう。
時間と責任の所在を補う
Vi undersøkte saken i går.「私たちは昨日その件を調査しました」から undersøkelsen av saken「その件の調査」にすると、「昨日」も「私たち」も自動的には残りません。名詞自体には、動詞のように過去・現在を示す働きがないためです。
時間が大切なら Undersøkelsen ble gjennomført i går.「調査は昨日実施されました」と補えます。ただし、これでも調査者は不明です。責任の所在が重要な場面では、Vi undersøkte saken i går. のまま書くほうが明快です。
一歩進んだ理解
「〜すること」には名詞以外の表し方もある
不定詞とは、lese「読む」のように、時や主語に合わせて変化させていない動詞の基本の形です。å を付けたまとまりは、文の中で「〜すること」に当たる働きをすることがあります。
- Å lese fagtekster krever tid. — 専門的な文章を読むには時間が必要です。
- Lesing av fagtekster krever tid. — 専門的な文章の読解には時間が必要です。
意味は近いものの、最初の文では動詞 lese が対象の fagtekster「専門的な文章」を直接伴っています。後の文では名詞 lesing が av fagtekster を伴います。Å lese av fagtekster のように、後者の前置詞を前者へそのまま移してはいけません。
日本語の「〜すること」を見たら、まず å を使った動詞のまとまりで自然に言えるかを考えます。活動を一つの概念として扱ったり、別の名詞と組み合わせたりするときは、名詞形が役立ちます。
活動と結果の違いは、語尾だけでは決まらない
名詞は、動作そのものを表す場合も、その結果できたものを表す場合もあります。
- Byggingen av broen tok to år. — 橋の建設には二年かかりました。
- Bygningen har fire etasjer. — その建物は四階建てです。
Bygging は建てる活動、bygning は建物です。この組み合わせは違いが明確ですが、「-ing は必ず動作、-ning は必ず結果」と一般化はできません。Utvikling「発展・開発」は変化の過程を表せますし、beslutning「決定」は一件ずつ数えることもできます。語尾は手がかりであって、意味を完全に予測する公式ではありません。
同じ語が複数の捉え方を許すこともあります。Forbedring は改善という変化を表す一方、flere forbedringer「いくつかの改善点」では個々の変更点を表します。単数・複数の使い方と文脈も見て判断しましょう。
長い内容を受け直し、文章をつなぐ
名詞化は、前の文の内容を短く受けるためにも使われます。
- Kommunen vil redusere trafikken i sentrum. Denne reduksjonen skal gi bedre luftkvalitet. — 自治体は中心部の交通量を減らす方針です。この削減によって、大気の質の改善が見込まれています。
Redusere「減らす」を reduksjon「削減」に変えると、すでに述べた出来事を次の文の話題にできます。-sjon も、名詞を読む際に知っておくと役立つ形です。ただし、これも自由に作るのではなく、redusere → reduksjon のように対応を覚えます。
この働きは、長い説明を読みやすくするうえで重要です。名詞化を避け続けるのではなく、「新しい動作を説明する場面」と「すでに出た出来事を受ける場面」を分けて使いましょう。
修飾語も動詞用から名詞用へ組み替える
修飾語とは、ほかの言葉に詳しい説明を加える部分です。動詞を詳しく説明する副詞と、名詞の性質を示す形容詞では、形や位置が変わることがあります。
- Situasjonen endret seg raskt. — 状況は急速に変化しました。
- Vi så en rask endring i situasjonen. — 私たちは状況の急速な変化を目にしました。
動作の進み方を示す raskt が、名詞 endring を説明する形では rask になります。名詞化では、元の文の単語を並べ替えるだけでなく、周りの言葉の形まで調整する必要があります。
また、定形の名詞に形容詞を添える場合は、den raske endringen「その急速な変化」のようになります。ここでは den と名詞の定形を組み合わせ、形容詞も raske にします。名詞化した語にも、通常の名詞の規則がそのまま適用されるのです。
練習の進め方
動詞・名詞・前置詞を一組にする。 forbedre systemet → en forbedring av systemet「システムを改善する→システムの改善」のような対を五つ作ります。接尾辞だけでなく、冠詞と前置詞も辞書で確認してください。性質の語なら trygg → trygghet「安心できる→安心」のように、日本語で自然な対応を書き添えます。
両方向に書き換える。 Vi vurderte forslaget grundig.「私たちは提案を十分に検討しました」を、Vi gjorde en grundig vurdering av forslaget.「私たちは提案について十分な検討を行いました」に変え、翌日は逆向きに戻します。誰が行ったか、対象は何か、いつのことかが保たれているかも確認しましょう。
実際の文章で、名詞化の目的を探す。 ニュースや職場の文書から -ing、-ning、-else、-het の語を三つ拾い、「活動を話題にしている」「結果を数えている」「前の内容を受けている」のどれに近いか考えます。そのうち一文を動詞中心に直し、どちらのほうが場面に合うか比べてください。名詞の数を増やすことではなく、読み手に必要な情報を伝えることが目標です。
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- 改まった書き言葉 — 名詞化を、受け身や語彙の選択と組み合わせ、文章全体の調子を整えるための基礎です。